自家用車

香港の自家用車事情

自家用車を持つ背景

 香港は、小さな国です。それでも、都会もあれば田舎もある。でも、日本人が住むとなると、香港島の北側の海外沿いか、反対側の 九龍地区の南端、尖沙咀かせいぜい旺角あたりまで。この辺に住むのなら、自家用車はいりません。バスや地下鉄が便利ですし、タクシー は24時間走っています。

 このあたりの事情は香港人も同じです。普通の香港人は自家用車を持っていませんし、持つ必要もないのです。それでも自家用車を 持っている人は、どうしても必要な人。来客の送り迎えが必要になる企業のオーナーや、公共交通機関を利用しにくい有名人ですね。

 しかも、住まいの高いことにかけては世界一の香港です。市街地に駐車場など無い。有ったとしても、それこそ、目が飛び出るほどの料金を 取られます。よって、自家用車を持てる人はそれなりの資産や収入のある人です。ベンツは普通の車、裕福な人なら、ロールスロイス が自家用車です。日本人の感覚とは根本的に違っているのです。少なくとも、これまでの香港では……。

 それでも、最近の香港は事情が違ってきています。これまでの、都市の中心部に立地する住宅街(階下が店や事務所、 超高層ビルの上の方の階が住宅といった、職住近接が香港の特徴でした)から、中国との国境に近い北方の新界地区に、最近になって盛んに開発が始まった巨大な住宅街に、人口の移動が始まっているのです。 徐々にでは有りますが、車が無いと生活ができない、香港も、そんな住環境に変わりつつあるのです。

 高額な収入があるから自家用車を持つ、ステイタスとして高級車を買う、そんな感覚とは別の、日常の足としてのマイカー時代が始まろうとしています。

その値段と自家用車に出費する金銭感覚

 香港という国は、合理主義を基本としている国です。一般的な行政サービスを受けるための税金が安い代わりに、特定の人だけが利益を 受けるようなサービスに対しては徹底的な受益者負担です。

 自動車専用道路は車を持っている人が利益を受けるのだからと、自動車を 持つための税金は目が飛び出るほど高く設定されています。香港では自動車を製造していませんから、全てが輸入車です。その輸入関税は 100%を越えているそうです。つまり、同じ車種ならば、単純に計算して日本の倍以上の値段になります。 ガソリンの税金も道路建設に使われることから、その値段は、1リットルあたり、150円から200円と、日本価格に比べ高価です。

 さて、それでは、香港で自家用車を買うのは、まあ、言ってみれば王侯貴族、特殊な人だけかというと、どうも、そうでも無いようです。 事実、私が勤務していた日系香港法人の部長クラス(私の部下たちです)は、自家用車を持っていました。もちろん、都心部に住み、そもそもが自家用車を必要としない人たちは持っていませんが、 郊外の新興住宅地に住む社員達は、やはり不便なのでしょう、自家用車を持っていました。持っている車はベンツが圧倒的に多く主流でした。

 そしてその購入価格は、少なくとも新車なら、彼らの年収を超える金額です。よほど、給料以外に資産でもあるのかと、雑談にかまけて聴いたことがあります。そして、気が付きました。 彼らは、自家用車を持つ、買うということは、少なくとも年収くらいの金額をかけるのが普通のことと思っていたのです。

 そういえば、私が最初に自分用の車を持ったのは、今から35年ほど前の、大学生の頃です。大学生でマイカー(古い言い方ですね(^ム^;)を持っていたのは、同級生でも私を含め数人だけでした。教授でさえも、持っていませんでした。まだそんな時代だったのです。

 その買った車の価格は、当時の大学新卒の年収(月給が2万円ほど、ボーナスを入れた年収は30万円程度。ちょうど、現在の中国と同じくらいの収入レベルですね)を軽く超える金額でした。そうなのです、当時の日本の感覚では、やはり、自家用車を買うということは、年収を超える出費を覚悟しての行為だったのです。 現在の香港がまさに、当時の日本と同じ感覚だとしたら、理解できます。

 私が、彼らと同じ感覚で、年収を超える金額の自家用車を買うとすると、BMWはもちろん、ベンツでも買えます。でも、 たかが足代わりの自家用車に、 年収をつぎ込むつもりはありません。自家用車にかける費用は、せいぜい、ボーナスの1回分かそれを少し超える程度まででしょう。それが、現在の日本人の普通の感覚だと思います。まあ、趣味で高級車を買う人はいますし、それは自由ですけど。

 それだけ、日本のモータリゼーションは進化しているということ、一方、香港はまだ、数十年前の日本の感覚だということなのでしょうね。

 でも、これからは香港も急速に変ると思います。おそらく、数年後には、香港人も、日本人と同じように、ベンツやBMWではなく、日本車や韓国車、もしかすると、もっと安い中国製の車を、実用車として買うようになるかも知れませんね。

運転免許を取る

 香港にも自動車教習所があります。香港人の知人に聞いたところ、ほぼ日本と同じように教習を受けて免許を取得します。かかる 費用も同じくらいのようです。

 ただし、日本人の場合は、日本の運転免許証があれば、領事館で英文の証明書を作成してもらい、申請すれば、無試験で香港の 運転免許証を取得できます。もちろん、日本で発行された国際免許証(申請するだけで簡単に取得できます。有効期間は1年ですので、毎年書き換える 必要があります)も有効です。

もろもろ四方山話

 さて、お金はなんとか都合し自動車を買いました。免許証は日本の免許証を使って香港免許に書き換えました。では、運転が できるのでしょうか。

 Noです。

 香港で自家用車を運転するには、ナンバーを取得しなければなりません。

 日本ならば、車を買えば、販売店がナンバーの発給申請をして取り付けてくれます。車が変われがナンバーも変わる。ところが、 香港では、ナンバーは車に付いているのではなく、人に付いています。個人の所有物なのです。車を変えてもナンバーは変わりません。 自家用車を持つためには、ナンバーを買わなければなりません。発給してもらうのではなく、買うのです。

 これまで、香港で販売されたナンバーの最も高かった価格は、1億円を越えていたそうです。

 香港人は縁起を担ぐ人が多く、縁起の良い番号は毎年少しずつ競売にかけて販売します。その利益は、 社会福祉に使われるとのことです。

 では、自家用車を持つには、その競売を待たなければならないか。そうではありません。普通の番号ならば、普通に買うことが できます。ただ、これが高い。はっきりとしたことは知りませんが、日本円で100万円前後のようです。香港に行き、普通の自家用車であるベンツの新車を買い、ナンバーも新たに買うとなると、 1,000万円をはるかに超えるお金を用意しなければならないようです。


 え〜、それでは買えないよ〜ぉ。嘆くことはありません。最初の1台目は、ナンバー付きの中古車を購入すれば良いのです。 海外に移民したり、高齢になって運転を止めた香港人が、ナンバー付きで自家用車を売ることがあります。そんな中古市場も形成されています。 これならば、100万円以下でも買うことができるとのことです。友人だった香港警察の警視殿は、中古の日産ブルーバードを、日本円で50万円ほどで 手に入れたと嬉しそうに言っていました。その車を使い、香港島内のバーベキュー場へ、私も運転して出かけていました(^ム^)



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hpmanager2@albsasa.com Albert 佐々木